Profile

プロフィール
広川雄一(仮名)、28歳。石川県出身。私立大学経済学部卒(写真部)。 大学を卒業後、ファーストフードチェーン店に就職。入社から6年、先輩社員の退職がきっかけで、行政書士の資格を目指すようになる

(c)2009 行政書士 合格体験記

(7)本試験直前のプレッシャーは予想以上だった

『いまは、日本中の小学生が宿題で泣いているのかも?』。そんなことを思いながら、僕も早朝から机に向かっていた。この週末と同時に子供たちの夏休み、8月は終わる。そして僕に残された勉強時間も、あと2か月とちょっとだ。

このことはある程度予測はしていたことだが、この時点でまだ弱点が克服できていなかった。それは試験の形式でいえば「記述式」への対応で、出題分野でいえばやはり「一般常識」が弱いことだった。特に記述式は3問出題され、3問合計で60点も配点されている。2問は解ける力をつけないと、合格は怪しくなる。
また一般常識は40%以上正解できないと足切りされてしまう。かりにトータルで180点を超えていても、一般常識がおろそかになると合格できないということだ。毎年、時事ネタからの出題もある一般常識対策だけは、正直、通信講座の教材だけでは不安が残った。

仕事が休みの日は図書館に詰めた。かなり無茶な理由もつけて有給も取るようになっていた。バイトのみんなにはどこかすまない気持ちもあったがそうした。図書館では新聞のダイジェスト版を読み続けた。一般常識の時事問題に備えるためだ。正直この一年間は勉強中心の生活で、ニュースも満足に見ていない。そのぶんきっと時事には疎くなっているはずだったから。

直前期には、予備校の模擬試験も受けた。得点率は62%、ギリギリだ。いけるかもしれない。でも、運が悪ければダメかもしれない。そんなこと考えているヒマがあったら勉強すればいいのに、ついつい考えてしまう…。試験直前のプレッシャーのなかでは、弱気の虫が動き出すのは本当だった。

そして11月の第2週目の日曜日。教室はちがっていたが、僕は昨年と同じ大学の試験会場にいた。緊張感も、昨年とはまるでちがっていた。暑いわけでもないのに、両手が汗ばんでいた。
『もし合格できなかったら、お前はまた今年と同じように1年勉強できるのか?』。なぜかそんな自問をしていた。当たり前だが、こんな苦しい思いはその年かぎりにしたかった。
そして1年学んできたことのすべてを、3時間の試験に注ぎ込んだ。


その年のクリスマスシーズンも、僕はサンタクロースをやっていた。昼間も冷え込む日の多い冬だった。だが仕事をしている、僕の気持ちは楽だった。合格発表はまだ1ヶ月も先のこと。しかし、自己採点の結果には相当自信があったからだ。
『きびしく採点しても7割の得点は超えている』、そんな感触があった。もちろん蓋を開けてみるまで本当のところは分らないが、たぶん合格していると思った。

『もし合格したら、会社に辞表を出すのは来年の3月頃だろうか?それとも合格したら、かえって独立するのが怖くなり、案外そのまま会社に居続けるのだろうか?』。そんなことを考えるようになっていた。

今度の正月休みはもう少し遅らせようと思った。できれば行政書士の合格通知を持って石川に帰りたかったからだ。誰だって先のことはどうなるかわからない。だけど親父やおふくろを喜ばせたかった。サンタクロースはそんなことを思っていた。


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