Profile

プロフィール
広川雄一(仮名)、28歳。石川県出身。私立大学経済学部卒(写真部)。 大学を卒業後、ファーストフードチェーン店に就職。入社から6年、先輩社員の退職がきっかけで、行政書士の資格を目指すようになる

(c)2009 行政書士 合格体験記

(5)親父は何も言わず、独立したい僕を
応援してくれた

年が明け1月の半ば、僕は石川県の実家にいた。仕事がら年末年始は休めない。ちょっと遅い正月休暇をとらせてもらうことにしたのだ。今回の帰省には特別の意味がある。
今後の身の振り方について、少しは両親に話をしておきたかった。「会社を辞めようと思う。独立開業してがんばってみたいんだ」と。

僕の親父は地元の商工会議所に勤めていた。だから行政書士のこともそれなりに知っていた。
「税理士にしたって行政書士にしたって、独立業はお前が考えているほど甘くないんだぞ」
「わかってるさ」
「本当にわかってるのか?」
「わかってるってば…」

親父はその先を続けなかった。でも怒っている様子でもない。つまりOKということだろうか?
「お前がそうしたいと決めたのなら、お前の好きなようにしろ」。親父には、いつもそのひと言を言わないまま黙り込んでしまうクセがある。母は僕用にと、おせち料理を作ってくれた。甘からく煮つけた小海老は、我が家のおふくろの味だ。親父と少しだけ酒も飲んだ。
「今年のお盆はじいちゃんの墓参りにも帰れないかもしれない。本気で勉強しようと思う」。翌日そう言って僕は実家を後にした。

東京へ向かう新幹線のなかで、僕は行政書士の参考書を開いていた。勉強していたわけではない。
『今年の10月までに、本当にこれを全部やり切れるだろうか?』、少し不安もあってあれこれ考えていたのだ。去年の夏から11月までだって、実はテキトーに勉強していたわけではない。夜は疲れてムリだとわかってから、朝6時には起きる習慣づくりもしてきた。洗面をすませたらコーヒーを入れ、しっかり2時間は朝学習をしてきたのだ。
その間は約3か月。だから不安があった。『仕事をしながら1年間で、市販の参考書をやりきるのはムリかもしれない』って。

だけど、予備校に通うことなんかできない。学費はどうにかなりそうだが、時間の都合をつけるのは絶対にできない。それに通学したら、会社にはすぐに知れてしまう。それはまずい。まさかクビにされたりはしないだろうが、上司の態度ははっきり変わるだろう。小林さんみたいなよき理解者は、どこの会社にもそんなにはいない。

僕は通信教育を利用することを考え始めていた。行政書士は、予備校や通信教育を使って受験する人たちの方が、圧倒的に合格率が高いことを知るようになったし、通信教育のテキストは、僕が買った市販のテキストよりずっとボリュームが少ないこともわかるようになってきたからだ。それに通信教育には、講義のCDが付いているのも魅力だった。
僕が集中して机に向かえる時間は朝しかない。勉強時間をふやすためには、何か別の手を打たなければならないと思っていた。それにはどこでも勉強できるメディアを使うのが一番かもしれないと思うようになっていたのだ。
新幹線は大宮駅を過ぎもうすぐ東京駅に着こうとしていた。部屋に戻ったら、さっそくネットで通信講座を申し込もうと思った。朝、石川を出る時は雪だったが、東京の空には雲ひとつなかった。


次のページへ